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どうぶつの森の「カブ」取引は「トウキ」取引の方が良かったんじゃないだろうか.

「あつまれ どうぶつの森」ではゲーム内の通貨を稼ぐ手段として「カブ」を売買するシステムがある. 文字通り野菜である「カブ」を一定の値段で購入しておき,時間の経過とともに変動する価格を見ながら購入した株を売り払うというシステムだ.

例えばこのカブを1つ100ベル(ゲーム内の通貨単位)で購入し,その後一つ150ベルに価格が上昇した時に売却をすることで1カブあたり50ベルの儲け,反対に1つ50ベルに価格が下落した時に売却をしてしまうと1カブあたり50ベルの損失が発生する.

これはまさに現実世界の株式の短期売買を彷彿とさせる. しかし,個人的にはカブじゃなくてトウキの売買でも良かったんじゃないかなと思う.

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Bijay chaurasia / CC BY-SA

投資と投機

どうぶつの森がやっていることは投資ではなく,投機だ.投資と投機は現実世界でもよく混合されるが投資とは「価値を生むものに資源を投じて設けること」であり投機は「ある商品の価格差を利用して儲けを出すこと」と説明ができる.

ビジネス書にお金を投じてそのノウハウを吸収したり,仕事で役に立つ資格を取得すること,自らの美貌を高めるべく美容院で高額な治療を受け,恋愛市場における価値を高めることは投資だ.

一方,外国の通貨を購入して,通貨の価格が高くなった時に売り抜けることや,ニンテンドースイッチを家電量販店で買った後フリマアプリで高額な値段で売り捌いて利鞘を抜くことは投機と言える.

現実世界の株では投資も投機もできる.これは取引のスタイルの差による違いでしかない.ある企業が中長期的に成長することを見込み,その企業の所有権(資産,ビジネスモデル)の一部を所有し富を生んでもらおうと思って株を買えばそれは投資と言える.一方同じ会社の株でも「明日にはいくら値上がりする気がするから,今日買って明日売り抜けよう」と株そのものの価格差にのみ着目して株を買っていればそれは投機になる.

どうぶつの森の「カブ」取引は投資?投機?

これは簡単に答えが出るだろう.どうぶつの森で行われている「カブ」取引は間違いなく投機だ.「カブ」を買ったプレイヤーはその「カブ」の価格差の変動にのみ着目し適当な売却のタイミングを探るだけであり,例えばその「カブ」を生かした新商品の開発,販売による富の創出はしようとしない.

株式の本質は企業の所有権を分割したものであり,それすなわち,その企業が所有する資産及び,その企業特有のビジネスモデルが生み出す収益の一部を保有するということだ. 例えば一株1000円の株価があり,一株当たりの資産が500円,企業が1年に稼ぐ一株当たりの純利益が100円だとすると,「ああ,この株は500円の資産と100円/年の利益を生むビジネスモデルに1000円という価値がついているんだな」と理解できる.そこに日本や世界の経済の流れ,その企業の今後の収益見込みなどを勘案し,安いなと思えばその株を買えばいい.

先ほど,現実世界の株は投資でも投機でも取引対象になると述べた.しかし,その区別がつけられない人はどうぶつの森の投機システムを通じて「ああ,株とは今遊んでいるカブみたいに価格差に着目して儲けを出すものなんだ」と誤解を抱いてしまうんじゃないだろうか.

コロナ禍・巣篭もり需要がMAXだったこの時期に発売された「どうぶつの森」は子供を含む,たくさんの人に遊ばれている.登場する蝶々のグラフィックの精緻さが話題になったり,植物の複雑な交配システムが実装されていることがニュースになった等,作り手のこだわりには疑いの余地がない. だからこそ,この「カブ」取引も「トウキ」(陶器)取引と称したものにして投資と投機の違いをはっきり示してくれた方が良かったんじゃないかなあと思う次第.

tsundoku-soymilk.hatenablog.jp

どうぶつの森を取り上げた記事はこちらにもある.

世界一やさしい 株の教科書 1年生

世界一やさしい 株の教科書 1年生

投資と投機の違いを含め,「お金」のあれこれは学校教育でまともに教えてもらえないけど,現代を生き抜く上で超重要だ. この手の話が全くわからないという人はお金のあれこれに関する入門本がたくさん出版されているので読んでみてもいいかもしれない. お金に抵抗がある人も,定食1食分の値段と変わらない1冊の本が一生物の知識を授けてくれる快感を味わうという意味でお勧めしたい.お金の話は即効性があって役に立ちがち.

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